測定機器向け金属加工|寸法精度・幾何公差・材料選定の実務ガイド

測定機器向け部品を切削・フライス加工する際に必要な寸法精度・平面度・幾何公差・熱変形対策・材料選定を整理した実務ガイドです。精度要求の高い部品で発生しやすい誤差要因や、加工前に確認すべきポイントをまとめています。
目次
測定機器向け部品の特徴
測定機器は「基準」を担う装置であり、他の業界に比べて圧倒的に精度要求が高いという特徴があります。
- ミクロン単位の寸法精度が要求される部品が多い
- 直角度・平面度・平行度などの幾何公差が厳格
- 熱変形に敏感で、加工条件・材質・ワーク保持が性能に直結
- 振動・共振に弱い構造部品が多く加工が難しい
要求精度の目安と管理ポイント
一般的な要求レベル(例)
| 項目 | 要求値の目安 |
|---|---|
| 寸法公差 | ±0.005〜±0.02 mm |
| 直角度・平行度 | 0.01〜0.05 mm |
| 平面度 | 0.005〜0.03 mm |
| 表面粗さ | Ra 0.8〜3.2(用途により変動) |
※上記は一般的な測定治具・検査機器部品の代表値であり、実際の図面公差が最優先となります。
精度に影響する主要因
- ワークの熱膨張(加工熱による伸び)
- クランプ圧による変形
- 機械側の剛性不足・振動
- 工具摩耗による仕上げ寸法のバラつき
材質選定のポイント
A5052・A6061(汎用アルミ)
- 軽量で加工性が高い
- 治具・ブラケット・軽量ステージに使用
A7075(高強度アルミ)
- 高強度・高剛性で変形が少なく安定した測定精度を確保
- 基準ブロックや精密ブラケットに採用される
SUS304・SUS316(ステンレス)
- 温度変化に強く、耐食性・強度に優れる
- 測定治具・接触部・光学関連の保持具に使用
SKD11・S45C(工具鋼・構造用鋼)
- 高強度で耐摩耗性が高く、摺動部にも強い
- 精密ガイド・摩耗部品に採用される
加工上の注意点(切削・フライス)
① 熱変形の最小化が最重要
- 荒加工で発熱 → 寸法伸び → 仕上げで寸法が落ち着く
- 荒と仕上げの2段階加工(余肉管理)が基本
- 仕上げ工程はクーラント併用で熱影響を最小化
② ワーク保持は低クランプ圧・多点支持
変形や傾きを防ぐためには以下が有効です。
- 真空チャック・吸着治具の使用
- 柔らかい当て材の利用
- 面で支える治具設計
③ 工具選定と刃先管理
- 高剛性のショート刃エンドミルを優先
- バリ発生を抑えるコーティング/刃形の選択
- 最終仕上げは摩耗状態を見て工具交換
④ 表面粗さ・微細形状の仕上げ
- 研磨仕上げ・ラップ仕上げが必要なケースが多い
- 微細穴・細溝は工具径のたわみを考慮する
測定機器特有の図面注意点
- 基準面の指示(Datum)が必須
- 幾何公差は“どの面を基準に評価するか”が重要
- 光学部品では黒染め・アルマイトの反射率にも注意
- バリゼロ指示や角R指示は明確に記載する
よくある質問(FAQ)
- Q. 平面度0.01など高精度要求にも対応できますか?
- A. 図面公差に応じて加工方法を調整し、荒〜仕上げまでの温度管理・治具管理を徹底することで対応可能です。
- Q. 測定治具の図面が未確定でも相談できますか?
- A. はい。基準面・測定方法・必要公差の情報を共有いただければ仕様検討からサポート可能です。
- Q. 材料証明やRoHS対応は可能ですか?
- A. 可能です。材料証明書の提出や環境規制対応素材の調達も行っています。
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