建設機械向け金属加工|高強度材・耐摩耗部品の加工要点

建設機械(建機)向けの金属加工に必要な強度設計・摩耗対策・溶接部との整合性・材料選定をまとめた実務ガイドです。重負荷・屋外使用・振動環境で使用される部品のため、一般産業用部品とは異なる配慮が必要です。
目次
建機向け部品の特徴
建設機械用部品は「負荷・衝撃・摩耗」にさらされるため、通常の産業機械とは要求条件が大きく異なります。
- 高強度材(S45C / SCM / A7075)の使用割合が高い
- 屋外環境のため腐食対策(表面処理)が必須
- 溶接補修を前提とした設計が多く、加工時に歪みが発生しやすい
- 振動・衝撃に耐えるため、肉厚部品や大型ワークが多い
建機部品に求められる性能
| 性能項目 | 要求内容 |
|---|---|
| 強度・靭性 | 重負荷下でも破断・塑性変形しないこと |
| 耐摩耗性 | 泥・砂・粉塵にさらされる環境での摩耗防止 |
| 耐食性 | 雨・湿気・寒暖差など屋外環境への耐性 |
| 溶接性 | 補修溶接との相性が良い材料が望ましい |
材料選定のポイント
S45C(構造用炭素鋼)
- 高強度で価格バランスが良い
- ジョイント・シャフト・リンク部品に使用
SCM440 / SCM435(クロモリ鋼)
- 疲労強度・靭性が高く、衝撃荷重に強い
- 高トルク部品や重負荷部に採用される
A7075(超々ジュラルミン)
- 軽量化が必要なアタッチメントやブラケットに有効
- 高強度でありながら加工性も確保しやすい
SUS304 / SUS316(耐食ステンレス)
- 屋外腐食対策として一部部品で採用
- ピン・ブラケット・締結部で利用される
加工時に注意すべきポイント
① 肉厚部品は内部応力に注意
建機部品は肉厚で大型ワークが多く、内部応力が残留している場合があります。
- 荒加工 → 時間を置いて応力解放 → 仕上げ加工が基本
- 重切削は反りを発生させやすい
② 溶接熱による歪み対策
建機部品では溶接との組み合わせが多く、加工品も溶接補修される前提の設計が一般的です。
- 溶接後の追加工では歪み測定が必須
- 治具拘束を工夫し反りを最小化
③ 摩耗部品の硬度管理
- ピン・ブッシュ・リンク周辺は硬度が重要
- 焼入れ材の場合は加工順序の最適化が必要
④ 砂・泥を想定したクリアランス設計
建機は粉塵・泥が侵入する前提で設計されており、精密機器に比べてクリアランスが広めに設定される傾向があります。
表面処理の必要性
屋外利用のため防錆・耐摩耗処理は必須です。
- 黒染め(防錆)
- 硬質クロムメッキ(耐摩耗)
- 焼入れ処理(高硬度化)
- アルマイト(アルミ部品)
建機特有の図面注意点
- 溶接補修を前提とした寸法補正が必要な場合がある
- ピン穴は摩耗前提でクリアランス指示がシビア
- ショットブラスト前提の寸法指定に注意
- 表面処理前・後をどちらで指示しているか確認必須
よくある質問(FAQ)
- Q. 大型ワーク(500mm超)の加工にも対応できますか?
- A. ワークサイズに応じて加工方法や保持治具を最適化し、反りが出ないよう工程管理を行います。
- Q. 溶接と機械加工を組み合わせた部品も依頼できますか?
- A. 可能です。溶接後の歪み取りや追加工にも対応できます。
- Q. 摩耗部品の材質選定で迷っています。
- A. 使用環境(衝撃・粉塵・荷重)に応じて、S45C、SCM、焼入れ品、A7075など最適材質を提案できます。
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